なぜ人は人を応援するのか?みたいな part.1 (無料公開)
Limonène(サノ・月島)で対談をしました。対談の音声を書き起こしたものとなります。
※サノは月島のことを「みしる」と呼んでいます
※月島はサノのことを「カモメちゃん」と呼んでいます
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月島: はい、録音、いたしました……。じゃあ早速やっていきますか
サノ: はい、やっていきますかね、雑談を……
月島: 今日は何の話?
サノ: なんとなくテーマは、決めてあって……。フィクションの世界での、スポーツって、どう見れば良いんだろう、みたいのが……。結構昔から、ずっと、疑問だったんだけど……
月島: それはフィクションのみ?
サノ: そこから、広げて考えていくと、そもそもスポーツはどう見れば良いんだろうみたいなのが、とりあえず、フィクションの中のスポーツ、が……、一番なんか、分かんないなあ、って思って。いまちょうど(スポーツの)アニメとかやってたりとかね、するんだけど……
月島: 現実はじゃあ、応援しようって感じはあるの? まあ、ないんだろうけど……ww
サノ: それもさあ、基本、ないんだよねww
月島: うん、なさそうだよね
サノ: でも、ないことはないんだよね。フィギュアスケートを結構、熱心に見ていた時期もあったしね
月島: あ、そうなんだ、意外! 羽生さん?弓弦さん?
サノ: まあでもその頃だよね
月島: へえー、そうなんだ。(私は)通ってきてないや
サノ: 宇野昌磨とか、のね……。出てきた頃、ちょっと見てたとか。キレイだし……、やっぱり、(フィギュアスケートって)失敗したとき、めちゃめちゃ派手だからさあ
月島: あ、そうなんだ!
サノ: まあ普通に、転んだりするんだよね。オリンピック出るような人でもさ。なんかその、結構、音楽とかもそうじゃん。なに、失敗した時が一番……分かっちゃうからさ
月島: まあ、そうだね。でも音楽の失敗って(あんまり分かんなくない?)……。ああそうか、ライブとかってことか
サノ: ああ、そうそう。なんかね、わかる気、が、しちゃうんだよね……。これが、なんだろうね。陸上とかになるとたぶん、分からない、もう。このフォームが……とか言われても、あんまり分からない
月島: 明確な失敗とかって、あんましないもんね。ちょっと、順位が下がるというか……、早くなかった、とかぐらいは、分かるけど
サノ: かといってなんか、例えばだけど……、ダンスとかになっちゃうと、分からないじゃん。フィギュアスケートと、なんだ? スケボー? ハーフパイプ、だっけ?
月島: ハーフパイプっていうのかな?
サノ: ああいうのは、ジャンプのなんか、すごさみたいなのが。技みたいなのがあるから、自分でもちょっと分かる、分かりやすい……感じだなっていうのは、なんとなく思ってた
月島: そうだね……。ほんでなんだっけ? フィクションの中の……?
サノ: なんかね、がんばれ〜みたいな気持ちが、発生することは、あるんだよね。リアルでも。こんな……人のことをねえ、だって、応援しなさそうな人間だと思われてると、思うんだけど
月島: うん、まあ、思ってるけど……
サノ: こんな人間でも、そういう気持ちになったり、するんだけど! フィクションのさあ、なんか……。そういうシーンとかさあ、そもそもフィクションでのスポ根とかってさ、なんだろうね。修行する系の……、少年マンガ的なね?やつとかでも、そうだけどさあ。「その頑張りって、なんだろう?」みたいな気持ちになるんだよね
月島: まあ、そうだねえ
サノ: 実在してない頑張りがさ、あってさ。その、うーん…………。どう見れば良いのかが未だによく分かってないんだよ
月島: わかる。すごいわかるよ。だって……、フィクションのさ、スポ根、スポーツものってさあ、言うたら、勝つじゃん。わかんない。勝たないのもあるのかなあ? あんまし、ちょっと、詳しくないんだけど……。大体、勝つじゃん。あれなのかなあ……、チームとかがあったりとかして、主人公が一人じゃなくて、どこが勝つか分からない、みたいなものは、好きなチーム応援しがいがあるのかな? 多分……
サノ: ああ……
月島: でも、例えばフィギュアスケートの漫画です、主人公が一人です、この子の物語です、ってなったときに……、世の中にはもしかしたらあるのかもしれないけど……。基本的には、その子がすごい挫折して、そのままフィギュアスケートを辞めて、そのまま普通に就職しましたみたいなww 話には……なんないと思うんだよね
サノ: ねww
月島: なりようがない……。いや、分かんない。あるのかもしれないし、それが、評価されてる作品が、あるのかもしれないけど!
サノ: 知らないけど……
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月島: ドカベンとか知ってる? あれ、作品。漫画の、アニメのさ……
サノ: 読んだこととかは、ないわ
月島: あれってどういう漫画か知ってる?
サノ: 知らない知らない
月島: あれって、野球のさ、漫画なんよ。名前ぐらいは知ってる?
サノ: 名前は……
月島: あれって野球漫画なんだけど……。野球漫画っていうことになってるし、みんなそうだと思ってるんだけど……、元々柔道漫画だったんよ
サノ: そ、そうなんだ……?
月島: そう、で、何巻だっけかなあ……。途中、結構4、5巻くらいまでやってたと思うんだけど、結構長らく柔道の漫画だったんだよね。途中で(主人公が)野球部に移籍して、野球漫画になったんだよねww
サノ: ええ〜、種目変わることあるんだww
月島: そう、種目変わっちゃったんだよ! 柔道じゃなくて、野球になったんよ。で、実際いま、野球漫画、っていうイメージだから……
サノ: だと思ってた
月島: まあなんか…、元々野球漫画にしようみたいなのはあったらしいから、柔道編のときにはもう野球っぽい話とか、伏線とかはあったらしいんだけど……。そういうふうにこう、話が変わる……。読んでる人、はさ、「このあと野球になるな」とは、思ってないと思うんだよな
サノ: ええ……
月島: みたいな例とかもあるし、実際それは、すごく売れてるから……、(そういう作品が)ないとは、断言できないんだけど……。でも、ウルトラ挫折して、もう就職します、は、あんまりないよね
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サノ: でも、モブ……、というか、サブキャラについて(人間性を)描いてるから、スポーツ作品でも厚みが生まれるのかな
月島: それ自体はあるよね。メダリストとかも、たぶん、そうだけど……。あと、サブキャラが、「退場」って言葉をよく使われるけど、退場して……。別の人生を歩んだりしたりとか、っていう作品は、まあ、あるよね
サノ: そうだね……でもそれってサブキャラじゃん?
月島: まあね。主人公だけを考えたときにね、どう見て良いのか(分からない)っていうのは、分かるわ
サノ: なんだろうね、天才が絵に描かれるってことっていう時点で、さ……。もちろん描く側が難しそうだなとは想像が、つくんだけどさ……
月島: いかにカタルシスを持たせるかみたいなのはね……
サノ: 言うなればいくらでもさあ、すごい人にできるわけじゃん
月島: そうだねえ
サノ: でも、あまりに、浮世離れしてたら……、人間として見てもらえない、みたいな……
月島: まあ、「フィクションだな〜!」って感じにはなるわな
サノ: そもそも、なんか……。成功できてる人、のこと、を……人として、見れないからさあ……
月島: カモメちゃんが?w それは実在の人物も?
サノ: 実在だと(見れない)ね。どっちかっていうと。だから作品でも天才とどう向き合って良いのか……
月島: でもさあ、「りゅうおうのおしごと!」っていうライトノベルがあって……。将棋の、作品なんだけど……
サノ: ああ、アニメちょっと見てた
月島: その主人公がめちゃくちゃ若くてすごい、っていう設定で……、「そんなんあり得ないだろ」っていう、フィクションだったんだけど。まあ、藤井さんが出てきて、その記録を全て塗り替えて……。あるんかい!みたいなww あれはやっぱちょっと、(作家も)想定外だったと思うんだよね
サノ: 将棋と野球は、それが起きたのか
月島: そうそうそう、野球もそうだよね。大谷さんとかが、やべえからww 「ありえないだろ!」みたいな記録を、出しちゃったり……、するから。どこまでいったらフィクションじゃなくなるのかみたいなのは、ちょっと、気になるよね。まあ、フィクションはね、フィクションなんだけど
サノ: でも、そう言いながら……、最新話まで見てますからね
月島: メダリスト?
サノ: そう。三日くらい前に……、ちょっと、見とくか〜と思って。オープニングでも聴いとくか〜と思って、見初めて。昨日なんかね、「次のエピソード」の、ボタンが出てこなくて……、あれ?ってなってた
月島: その経験オタクすぎるってww 最新話まで見ちゃったか。あれはね〜、すごいよね。じゃあさ、視聴体験として……応援、したくなったの? いのりさんを、主人公を……
サノ: やっぱね〜……、どう見れば良いのか分からない瞬間が、半分くらい……
月島: どう見れば良いのかっていうのは、感情移入しづらいとか?
サノ: いや、「カッコいい!」とは、思う。「すごい!」って思って、見る瞬間もあるんだけど……。でも、(作家がキャラを)すごく書いたら、すごく、なるよな〜っていう
月島: ww 「盛ってるよね」ってことだよねww
サノ: そうそう……
月島: 確かになあ。それでいうと、ちょっと、若干話変わるけど……、ウマ娘って作品があったじゃないですか
サノ: はいはい
月島: 私はすごい好きなんだけど……。ウマ娘っていうか、元々すごい、競馬が好きなんですよ。で……、カモメちゃんは見た?
サノ: いや、見たことない…
月島: じゃあ、ザックリとなんだけど……。ウマ娘って実際の競走馬をモチーフにして、描いているわけよ。だから走ることが目的で、キャラが早く走って、勝つか負けるか、ってことになるんだけど……。まあ、逆に、競馬詳しくて好きな人は「あの年のあの馬は勝ったよね」みたいなのは知っちゃってるから……それはネタバレ状態ではあるものの
サノ: ああ……ww
月島: でも競馬知らない人は、どの馬が、勝つか負けるかっていうのは、もちろん分かんないのよ。そんで、誰が主人公っていうのも、あんましないからさあ……。で、漫画とかだったら、「ふつう」っていうとアレだけど……。フィクションにおいてはさ、めちゃくちゃ強く描かれてるキャラがいたら、負けないんだよ。「強い」キャラを描く時に、「負ける」は必要ないからさ
サノ: そうなるね
月島: でも、実際の競馬だと……負けるんだよね。競馬って。どんなに血統が良くて、何連勝してても、絶対負けちゃいけないタイミングでも。だから、ウマ娘でも、絶対勝つだろみたいな演出を散々やったあとに、負けるんだよ。逆に、勝たなくて良いタイミングで知らんやつが勝ってる。それが結構、個人的には新しい視聴体験だなあと思ってて、「普通勝つだろ!」、「普通負けるだろ!」っていう、お約束がある、フィクションの枠に囚われてなくて。現実だから
サノ: 現実って、そうなんだよね
月島: 一応、ウマ娘は作品としては、キャラクターの……。ほんとの馬には(人間のような感情やストーリーは)あんまりないんだけどさ。ちゃんとキャラのストーリーがあって、勝ち負けにそれらしい必然性は持たせてるんだけど……。でも、事実を元にしてるから、実際にこれがあったんだよね、っていうのは描かれるわけ。あとから考えて、こんなことが実際に起こったのか、って思えるわけ。で、多分これって、ウマ娘に限らず、私がたぶん、知らんだけで……ノンフィクション作品とか、実際の、サクセスストーリーとかも、多分そうじゃないかと思うんだよね。ノンフィクション作品が好きな人って、そういうとこなのかなって思って
サノ: ああ〜…
月島: 企業の話とかさあ、人物にフォーカスしたやつ?……あるいはアーティストとか。それって、全然売れない時期とか、あるわけじゃん
サノ: うん
月島: リアルに描くってことと、必然性のなさって表裏一体じゃない。フィクションの存在は、作者がキャラの強さを決められるけど……。じゃあそれが現実だったら、応援できんのか、みたいなね……。どうなんすかね……
サノ: 「リアリティ」って意味では、あっけなく負けてったりした方が、リアルなのよね。でも、弱い人を応援したいかというとさ……ww
月島: ……わかるよww ある種、あると思うんだけど、そういうときもね
サノ: そこがねー。難しいんだよね〜。ただ、メダリストで言うと、やっぱり、セリフが強いな、と思うことは、あったね
月島: ああ、そういうことなんだろうね。その、実際「勝つ」「負ける」みたいな、「応援する」「応援しない」とかじゃなくて、それに向き合う人をどういう風に見るか…みたいなところが、(スポーツ漫画の)主軸なんだろうね
サノ: そうなるかなあ
月島: 勝ち負けは、あるからな。大体、どこにも。……自分らが置かれてる「音楽」が結構、異様なんだと思うんだよねえ
サノ: というと?
月島: 音楽とか、創作物。もちろん、売れる、売れないはあるけどさあ、「勝ち負け」はないじゃん
サノ: うーん、勝ち負けだと思ってたけどね
月島: www 私は、そうじゃない、と、思ってるから……w
サノ: 「勝ち」と「それ以外」しかない、と思ってる
月島: 「売れる」と、「売れない」じゃなくて?ww
サノ: あ、そうそう。私は……「それ以外」の方だから……
月島: でもその、なんだろうな。カモメちゃんの音楽を聞いて、一人がそれで救われたら? カモメちゃんが、過去に救われた音楽が、全然売れてなかったら……? それは、負けてる……の?
サノ: うん
月島: あ、負けてるんだww 私はなんか、別に……そこは、勝ち負けの土俵じゃないかな、と思ってるんだよな
サノ: 教科書には乗らないよね。歴史にはならないじゃん
月島: 歴史には残らないわな
サノ: 歴史にならないところで、人を救ってるのかも、しんないけど……
月島: うん……
サノ: そういうの、いっぱいいるからさ……
月島: そうそうそう。音楽に限らず……。それは、社会的インフラとかも歴史にはならないけど、俺らすごい救われてるし
サノ: まあね?
月島: じゃあまあ、俺らがインフラかというと違うんだけどさ……。これが美味しかったとかさ、このグミ好きみたいなのも、別に歴史には残らないから、基本的には……
サノ: まあでも、「応援」って、ね……。我々を応援してくれてる人が読んでいるわけだからね
月島: そうだね。うーん、むずいね
サノ: そんな人たちに向けて、言うことでもないんだけどさ……。なんか、「なんで応援できるんだろう?」っていうのが、全然わからないんだよね
月島: あー。でも、でもやっぱ、みんな勝ち負けで見てないからじゃない?ww その、「勝って欲しい」とかは、思ってないでしょ。俺らにww 何にか分からないけどww
サノ: www
月島: 「勝つ」とかないじゃん。だって。Limonèneの活動にさww 何に勝つの?ww
サノ: でもなんか、もうちょっと流行って欲しい、みたいなのは……
月島: まあね! それはきっと、あるだろうな
サノ: 聴いてる人がさ……。良いものとして聴いている、と、仮定してさ、なんでこんな良いのに広まらないんだろう?、っていうもどかしさは多分、あるわけじゃん
月島: まあ、可能性はあるわな
サノ: そこで初めて、勝ち負けに近い……捉え方が出てくるんじゃない?
月島: 負けてるから広まらない、ってこと?
サノ: というより、まあ……。広まってない、って状態が、相対的に負けだからさ……
月島: んなるほどね。むずいな。……スポーツとは全然離れちゃうから、アレだけど……。広まって欲しいっていうモチベーションがどっちかによる気がしてて……。どっちか、っていうのは、例えば、新曲が聴けなくなると困る、とか? ライブして欲しい、とか? 多分その、継続して欲しいみたいな、何かしらの気持ちがあるわけじゃん。ファンでいてくれてる人は、さ……。てときに、売れてないと、やめちゃうかもしれないじゃん。やめちゃうのは、困るじゃん。だから応援するっていうのが、ひとつ?
サノ: うん
月島: もう一つが……。友達とかさ、周りにその話をしたいとか?……があると思ってて、後者の人は売れて欲しいだろうよ、それは。みんなが知ってる、みたいな。例えばAdoさんとか、髭男さんとか、米津玄師さんとか、なんかいろいろ、いるけど……。「あの新曲聴いた?アレよかったよね」とか、「この曲のここいいよね」みたいな、話がしたいってなったら、売れてくんないと困るわけよ。でも、(前者の)作品とか活動を継続して欲しいみたいな、モチベーションの人、は……。続けてくれるんなら、売れてなくても、困んなくない?
サノ: まあねえ?
月島: だから、そこは……人によっても捉え方、違うがする
***
まだまだ会話は続く。続きは後編で!